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May 2015

2015.05.16

翻訳テキスト処理の効率化セミナー

5月17日(日)に東京ほんま会で翻訳テキスト処理の効率化についてお話する機会をいただきました。AHK、ワードマクロ、秀丸マクロなどを使い、トラドスなどの翻訳メモリーソフトやウェブ、テキストエディター等を横断してテキスト処理を効率化する工夫についてお話しました。構造解析、用語集の作り方、AHK等のマクロによるアプリケーション相互の連携法についての説明や演習もしました。

以下にそのときの資料を掲げます。どなたでもご覧いただけます。お役に立てれば幸いです。

「Presentation.doc」をダウンロード

「structural_analysis.MAC」をダウンロード

「line_swap.MAC」をダウンロード

「autohotkey_for_tkyo_homma_kai.ahk」をダウンロード

「example_for_tokyo_homma_kai.txt」をダウンロード

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2015.05.12

テキストのアウトライン表示

翻訳作業にはテキストファイルで構造解析辞書と用語集を作り使っている。テキストファイルにするのはワードファイルに比べて処理速度が速いからである。

ただこの構造解析辞書と用語集のファイルが、新たなロジックを取り入れたり、単語を登録することで次第に大きくなってきた。それだけでなく、案件により微妙に処理内容が変わるため、両方とも頻繁に手を入れる必要もあるが、そのような作業で目的の行に到達するのに時間がかかるようになってきた。処理の干渉を点検するため、開いたファイルのあちこちを移動することもあるが、それもやや大変になってきた。

そこでアウトライン表示を活用することにした。テキストファイルを開くときには秀丸を使っているが、この2つのファイルを開くときにはアウトライン表示にするのである。それにより目的の場所に素早く行き着くことが出来る。

しかしアウトライン表示を活用するためには、処理の順番を考えながら類似する処理を一まとめにする必要がある。その作業は面倒なように思われるが、実は類似のものをまとめて眺めていると、ファイルの構成を変えたり正規表現処理を統一するなどの手直しのアイディアが浮かんでくる。アウトライン表示には、目的の場所に素早く行くというだけではない別の効用がある。

急がば回れ、順番にやればいいことがある。

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2015.05.08

訳文を磨く

ある方から翻訳したものの一部をいただき、その中の次の文章についてやり取りをした。

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An introspective, defensive, protective mood gradually enveloped Notre Dame as the clergy defended its exalted position against an encroching nobility and commons.
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貴族や市民階級に地位を脅かされまいとして、高位聖職者が汲々とすればするほど、神経過敏な内向きの心理がノートルダム全体に広がった。


最初に「汲々とする」という表現におやと思ったが、考えているうちにその表現(文の綾)の話もあるが、文章の構造をどう作るかが大切ではないかと感ずるようになった。

そこで論理的な筋道を明らかにして
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台頭する貴族や市民階級から高位聖職者が特権的地位を守ろうとしたため、ノートルダムは内向きの守りの姿勢をとるようになった。
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という訳文を考えて提示した。


それに対してご返事があった。「汲々」という言葉を使ったのは、挙げられた一文がそれまでに述べたことを濃縮したような文章なので、読み手に少し立ち止まって欲しいと思われたからであるという。

その上で原文の接続詞の as について書いてくださった。as は因果関係を強く示しているのではなく、gradually と呼応する形で「~にしたがって、~につれて」という意味に訳す方がよいように思うと、ランダムハウスを引用しつつご意見を述べられた。

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as(部分引用)
【3】…につれて,に従って:As one grows older, one comes to appreciate the little things in life. 人は年を取るにつれて人生の中でのささいな物の価値が分かってくるものだ.茵文語で so と相関的に用いることがある:As you go farther north, so the winters become longer and more severe. 北へ行けば行くほど冬は長く厳しくなる.
【6】…の時,の途端;…しながら(when, while よりも同時性が強い)【語法】:as you look away よそ見をしている間に.
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原文の as に因果関係の意味合いがないわけではないが、書き手はいかにも歴史家らしく、客観的な事実だけを述べて、因果関係を示そうとしていない、「話の論理的な筋道を明晰にする」局面ではないと思うというのである。

この方もどちらかというと「道筋」を見つけたくなるタイプであるけれど、いろいろな原文をつきあうと、相手によっては「ここはぐっと我慢、そのほうがいい」と思うときがあるとも書いてくださった。


なるほど、as をどう考えるか。この言葉には「であるから(因果関係)」という意味もあるし、「につれて(同時進行)」という意味もあることから、この文章を同時進行を意識して訳してみた。

この文章に「につれて」という同時進行があるとすると、何と何が同時進行なのかを考える必要がある。進行するからにはそれは行為、つまり動詞またはその名詞化されたものである。ここでは3つの行為が挙げられている。

・ノートルダムの内向化
・高位聖職者の特権の維持
・貴族や市民階級の台頭

そのどれとどれが同時進行なのか。as の位置からすると同時進行は内向化と特権維持である。そのような解釈で訳文を作ると
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台頭する貴族や市民階級から高位聖職者が特権的地位を守ろうとし、それとともにノートルダムは内向きの守りの姿勢をとるようになった。
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という訳文もありかもしれない。勉強になった。


会話や対話をしていて楽しく意味深いものになる機会は以外に少ない。翻訳をする人たちの間での自主的な訳文検討もやってみると結構難しい(講師が添削するというのならまた別であるが)。その方もいろいろ試し、誰とでもうまく訳文検討ができるわけではないと思うようになったという。

しかし「それだけ翻訳という仕事は難しい、だからこそ面白い仕事でもある。それを広くわかってもらいたい、翻訳という仕事の価値を高めたいというのが密かな野望」であると書かれていた。そうでなくては。

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