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2016.03.04

翻訳効率向上のためのワード活用法(入門編)

●はじめに
翻訳を始めて間もない頃はワードだけで仕事をしていました。その後色々なソフトを使うようになり、ワードについてもマクロなどを覚えましたが、ワードの基本機能だけでも翻訳効率と精度向上のためには色々な工夫ができます。

以下に述べるのは特別なソフトを使わず、ワードと添付の日本語入力(Microsoft IME)の環境で行える設定です。これだけでもかなりのことができ、これから翻訳を始めたい人や始めて間もない人のヒントになるかもしれませんし、帰省しているときや緊急のときなど普段の翻訳環境以外で仕事をするときにも役立つと思います。お話は英日翻訳を前提とします。

これは2015年10月に語学関連の出版をしている株式会社アルクの「翻訳通訳のトビラ」に、「翻訳効率向上のためのワード活用法(入門編)」として掲載させていただいたものです。転載をお許しいただいた同社メディア企画編集部の佐藤直樹さんに御礼申し上げます。

●画面の表示法
画面の表示法は、印刷レイアウト表示です。下書き表示、Webレイアウト表示、アウトライン表示は使いません。印刷レイアウト表示にするのは、それが紙に書くのと同じように自然に見えるからです。

●文書の背景色
最近は液晶画面のバックライトがLEDになり表示がかなり明るくなっています。このため白黒ではコントラストが強く、長時間画面に向かっていると目の負担が大きくなります。そこで作業をするときには背景色を薄いオリーブ色(RGBでR180、G185、B142)にしています。

他のソフトウェアでも色を変更できるときには、そのソフトでもこのオリーブ色とその明度違いに統一しています。対象となるのはデスクトップの背景、トラドスの各セグメント背景色、秀丸などです。さまざまなソフトの基本色調を同色に揃えると、画面が静かになり翻訳に集中できます(さらに言えば、集中するにはあまりたくさんの画面を開かず必要最小限にすることでしょう)。

●表示項目
開いたワードの画面にどれだけリボンやツールバーなどの情報を表示するかは各人の好みともいえますが、私は必要なもの以外はすべて非表示にしています。不要なものが表示されているとそれが思考の上で雑音となるからです。非表示にしておくものとしては画面上の変更履歴、罫線などのツールバー、ルーラー、本文内の編集記号、画面下の図形描画のツールバー、ステータスバーなどです。要するに実際の何も書かれていない紙に文字を書いていくのと同じような環境をワードでも作り出しているのです(実際の紙でも罫線や升目が入っていないただの白紙の方が雑念が排されます)。

もちろんそれらの情報を表示する必要が生じたり、マウスでそれをクリックする方が早いと感じるときには臨機応変に表示させます。またワードの機能に習熟していないときには、敢えて各種情報を表示する方が機能を覚えやすいかもしれません。

●用紙サイズと余白
パソコンでの翻訳作業では用紙のサイズを気にすることはありません。ただ用紙サイズが、印刷レイアウトで表示される行数や一行の文字数に影響してきますので、今は一般的となっているA4を指定します。また余白は上下左右とも25mmにしています。

●フォントと1行の文字数
フォントは横書きでの読みやすさからメイリオを使っています。またフォントのサイズは12ポイントにしています。

これは1行の文字数と関係してきます。つまり横書きで一行の文字数が多くなると視線の移動が大きく読みにくくなります。1行35字程度になるようにするとこのポイント数になるのです。

ただし1行の文字数なり行間は1ページの行数指定でも設定できるし、単独で指定することも可能です。また実際の画面での文字の大きさはズームと縮小(Ctrlキーとマウスのホイールを使います)で自由に変えられます。

●テンプレート保存
以上の準備ができたらその設定をテンプレートに保存します。これにより新しい文書は常にこの書式が適用されます。

●文字入力
文字入力にはIME以外にもATOKなど色々ありますが、私はIMEで十分と思っています。大切なのは単語登録をこまめにすることです。単語登録を工夫すれば入力のキーストロークの数が少なくなります。たとえば「登録」という漢字は「とろ」にしておくとか、「しく」で「してください。」とするなどです。文末などは句点まで登録するとかなりの省力になります。「をく」で「をクリックします。」など、色々用意しておくと便利です。

単語登録での読みは2文字か3文字にします。2文字なら入力は速いのですが、同じ読みのものが多くなると選択に時間がかかります。3文字ならストローク数が1文字余計になるので入力時間が増えますか、その読みで出てくる選択肢が少なくなるので選ぶのに時間がかからなくなります。まずは2文字で登録して、同じ読みの登録が増えてきたら3文字登録に切り替えるというような微調整をしながら両者を併用します。

うまく漢字変換ができるかどうかは文章を書くときの思考の流れに一番影響します。様々な単語を登録して育てた自分の辞書はバックアップをとり、その辞書はパソコンを変えても引き継いでいきます。

●親指シフト
今回の「ワードと添付の日本語入力の環境で行える設定」という枠から外れるのですが、日本語入力には多くの方がお使いのローマ字入力ではなく、親指シフトによるかな入力を使っています。これは各人の好みですが、親指シフトは思考を中断せず入力速度も速いように感じます。簡単なソフトを導入すればすみますのでお試しください。

●2つの枠
原文と訳文をどのように並べるかは翻訳効率に大きく影響します。大切なのは両者をできるだけ近くに並べることで、それにより比較対象が楽になります。具体的にはワード文書を2つ用意し(白紙原文、白紙訳文という名前のファイルを用意しておきます)、それを併置して開きます。その上で横長のウィンドウを上下に2つ並べるか、縦長のものを左右に並べるかします。

Vertical_2

または

Horizontal

私は縦長のものを左右に並べる方が使いやすいように感じています。それは英語と日本語の文章構造の違いに由来します。つまり英語の動詞は比較的先に出てきますが、それに対応する日本語の述語は文の末尾に来ます。そこで横長にすると視線が原文の左端と訳文の右端とで行き来することになります。それに対して縦長では上下の視線移動は多少あるものの左右はそれほど動かさずにすむからです。

●段組み
視線移動を少なくするという点では、段組みを活用することもできます。これは縦長のウィンドウを左右に並べるやり方の応用で、用意する文書は1つですみますが、そのままでは長い文書の翻訳には向いていません。

Column_3

段組みには段区切りの記号を目印にして、カーソル位置を原文側と訳文側で切り替えることができるというメリットもあります。ただこれをするためには多少VBAの知識が必要になりますので今回は割愛します。

以上、翻訳効率向上のためにワードをどのように活用できるか、その入門的なお話をしました。ある程度習熟してきたらマクロにも挑戦したくなるでしょう。あるいはテキストエディターを使う方がいいと思うかもしれませんし、複数のソフトの間でテキストの受け渡しをしたくなるかもしれません。それらについてはこの「翻訳のサロン」の該当記事をご覧ください。


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