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April 2016

2016.04.26

段取り

ドイツ系の企業グループの連結決算手続書を訳す仕事をしている。A4で200ページ。仕事に必要なものは翻訳支援ツール(今回はトラドス)とテキストエディター(いつもの秀丸)で、それにウェブ検索を組み合わせるというのは普段と変わらない。

ただ4万語の大きさになると、段取りを考えておくか否かで効率や精度に大きな差が生ずる。ここでの段取りとは、翻訳支援ツール、テキストエディター、ウェブ検索の三者の連携を良くすることであり、同時に三者それぞれの中での作業手順を十分に考えることである。

翻訳作業の中心になるのは、今回であればIFRSなどの会計基準を確認し、書かれていることを理解したうえで読みやすい訳文をテキストエディター上で作ること。それが本来の翻訳の仕事である。段取りをするのは、本業に専念できるようにするためである。

まずは翻訳に使う用語辞書の見直しがある。辞書にある用語は、訳文を作るテキストエディター(白紙訳文と名付けているもの)に自動的に入るようになっている。ただ正しい用語が出てこなければ訂正と新規入力の二度手間になるので、文書の内容に応じ会計用語、特に連結決算に関する用語を優先的に適用するよう辞書の組み直しをする。それと同時に、前方後方の一致不一致を制御する正規表現を使い、辞書の書き方を簡単なものにして処理速度を早くする。

また構造解析辞書の調整も必要になる。テキストの構造を視覚的に捉えられるよう、区切るべきところと区切ってはいけないところを指定するのであるが、それを今作業している文書に合わせて見直すのであ。ここでも前方一致、前方不一致、後方一致、後方不一致の正規表現が役に立つ。調整とは実際には、処理する対象に合わせてできるだけ正規表現を見直すことである。

それらの調整は既に組んである秀丸のマクロの修正になるが、さらに秀丸マクロに収まりきれない手順については、AHKを見直す。異なるアプリケーション間でのテキスト受け渡しにはAHKが必要になる。秀丸マクロもAHKも、一連の反復作業をキー登録してショートカットにする点では同じことである。

そこで考えておくことは、一連の作業をどこで区切りキー登録するのかということ。あまり長くしない方が良いこともある。

馬鹿の長糸という言葉もある。お作法と裁縫の授業がまだあった頃に女学校にいた母が聞いて覚えていて、話してくれた表現である。思慮の足りない娘は長すぎる糸で取り回しに苦労しているのに対し、賢い娘は使う場所にちょうどの長さの糸で手早く仕事を終えるという話。裁縫だけのことではない。仕事の内容を見極め、それにちょうど合うコンパクトな手段を選択することはいつでも大切。

また各操作をどこのキーに登録するかも考えねばならない。あちこちに分散していると手を大きく動かさねばならなくなる。さらに言えば、感覚や一連の手順に沿うような配列にすることも大切。上下左右の矢印キーは、アクティブ画面をその方向に切り替えるときに直感的に理解できるし、テンキーの123456に順番に行う操作を割り付ければわかりやすい。

段取りとは、旅客機が離陸し上昇して巡航速度に達するまでの間にたとえられるかもしれない。巡航速度に達してやっと機内サービスが始まるように、段取りを終えてから漸く本来の考える翻訳が始められる。段取りをおろそかにしてはならない。

いや段取りこそが、本来の仕事を効率よくしかも丁寧に仕上げる秘訣であって、それを含めて十全の仕事になると言った方が適切かもしれない。

そして段取りの各部分についてじっくり考えれば、道具を常に整備しておくといういつもの話になる。

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