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2009.06.01

没頭

芝に屈みこんでシロツメクサを抜いている。それ自体は雑草でないけれど、芝の中では異分子になり気の毒であるがご遠慮してもらっている。抜いてもすぐに生えてくるので勝ち目はないかもしれない。それでも面白くて格好の息抜きとなる。通りすがりの人は這いつくばり何をしているかと思うであろうが、人間のすることは大方がこれに近い。

草の中に頭を埋めていて思い出したことがある。

1981年の今頃のこと。職場の旅行で山梨にあるサントリーのワイナリーを訪ねた。ワイナリーという言葉に何かときめいたのは、知らない異国への憧れがあったからに違いない。整然と手入れのされた葡萄畑や醸造工程を見学したあと、そこで作られたワインで食事をした。新鮮な外気の中で食事をしながら味わったワインで心地よくなり、このようなところで半農半学の自然と関わる生活をするのも悪くないと思った。

朝起きると圃場を一巡する。既に仕事にかかっている人々と挨拶をしつつ作物の状況を見て、ここの土壌にはリンを追加するようにと指示をしている。空想の上では立派な農業技師である。一回りして健康な食欲で朝食を終え、その後は執筆中の論文の続きを書く。『農業科学』というジャーナルに載せる「ブドウ幼木の○○病の原因と対策」というもの。小さくバロックの音楽を流している。

午後も論文書きを続けるが、一段落したところで釣竿を用意する。夕刻を狙って渓流に岩魚釣りに行こうというのである。夜はそれを肴に軽く晩酌。夕食後は楽器の練習、皆との合奏となる日もある。まだ27歳であったとき、そのような日々を夢想した。

現実に農業技師になることはなかった。殆どの時間は画面に向かっている。それでも緑の中での散歩と草むしりでの息抜きはできる。

石壁の穴では雀が雛を孵して賑やかに鳴いている。こちらを怖がらずあたかも自分の家のようにして出入りしている。まあ彼らの方が先住者であって、雀たちはこちらを同居人と考えているのかもしれない。しばらく管理をしていてもらおう。

再び頭を草いきれの中に埋める。

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