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July 2009

2009.07.12

母のこと

母が胃の不調で6月下旬に入院した。検査の結果は2期ないし3期のがんであろうと。

7月10日に手術があった。開腹してみるとがんは随分大きく胃の幽門側、全体の3分の2の切除となった。大きさにして掌ほどとなるが、黒いがんの病巣は胃壁を突き抜けて外側に拡散していたとのこと。肝臓への転移はないものの、周囲のリンパ節などにも拡がっていたという。それを注意しながら削り取ったがきれいに取れたわけではないとも。執刀の医師は、84歳という年齢を考えると負担の大きな手術であり楽観はできない、およそ20日間は入院しその間に治療方針を決めると言葉を選び説明した由。

以上の話を基に調べて見れば、どのような状況で今後どのように進展するかはほぼ推測がつく。親のことも予想し8月半ばにここを一時閉じて日本に暫く住むことにしたのであるが、事態は考えていたより早く進んでいる。

病院にいる母からは手術前に3通の手紙を貰っている。

・・・ここに来てから絶飲食ですが、身体はすっきり、何とも今迄の体内のアクや重苦しさも取れてすっきりした気分でいますので、あまりくよくよして居りません。病院内は「人生」「病気」の勉強のしどころです。本人にしてみれば当然の経路と思っています。そちらでは双方の老親のことなれば御二人共々の御心中はさぞかしでしょう。けれども、私が若い時に漆戸の家のことを心配していると「遠い所のことをどんなに心配したとて仕方ない」と言われたことがあります。それと同様に思って御自分の前進のために身を守って一生懸命お励み下さい。・・・(6月23日)

・・・何事も自分の意思で事を運ぶ訳には参りません故、医師を信じ、自分の「運」を信じ、時の流れに身を任せ、「元気」に向かうことのみを祈っています。・・・(6月28日)

・・・病院に集まってくる人々の多くは老人ですが、一人の人間として色々な方々と親しく声を掛け合い励まし合っておりますと、「人の一生の姿」は千差万別のようでありながらも皆同じように見えてきます。最後の所の一時は現代医療というトンネルを通ることになりますが、その間にその人の持っている個性が拭われ、出てくるときには透明な等しい存在になり行くのが人生と思えます。それだけにこの病院内の一期一会の会話は大変に楽しく朗らかに暮らして居ります。このようなことは誰にも話しませんが。・・・(7月4日)

かつて母と話をしていて、次第に自分が母という個人を超えた明晰で普遍的なある精神と対話をしているような気持ちに捉われたことがある。手紙も同じ。透徹した見通しがあり尚その上に、身近な者から遠く離れている者やその先の人に対してまでもの配慮が感じられる。それは人間に対する深い理解なり思いから発するものであろうか。そして今、母の人間理解は究極のところに達しようとしているのかもしれない。間に合いたい。

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